【意見】昨年末に公表された「中井やまゆり園元利用者の死亡事案に係る検証チーム中間報告書」を読んで

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2025年 1 月 14 日
日本自閉症協会
政策担当 今井 忠(副会長)

1.いきさつ
この死亡事案とは、各種 報道によれば、昨年( 2024 年) 7月、 転居先 の 千葉県長生村の自宅で重い知的障害のある 44 歳の次男を殺害したとして 78 歳の父親が起訴された事件 です。
死亡した次男は 神奈川県立中井やまゆり園 (以下、園 の短期利用 を 5月 30 日に終了し、 家族は 6月上旬に 神奈川県から 千葉県長生村に転居し 、その翌月に事件が起き ました。
中間報告書によれば、死亡した本人は小さい時から神奈川県内 でいくつかの 福祉サービスを受けており、 19 歳の時には園を一時利用し、 25 歳では 園に入所したが、翌年に家族の希望で退園となったものの 、その後も短期での利用がされてい ました 。
事件の翌月の8 月に は 検証チームが発足し、 12 月 10 日に表記中間報告書が公表されました。

2.中間報告書について
① 事件後ただちに関係者を中心とした検証チームを立ち上げ 検討を進めてこられたこと、また、ご家族の承認のもと、報告書を公表されたことは極めて重要だと考えます。
② 本人の小さい時からの経過、とくに 成人以降の経過を詳細に記述 されて いることは参考にする際の原点になるものであり、勝手な憶測に陥らないためにも重要だと考えます。
③ 家族と本人が 記述されているような状態 に あるときには、「本人への直接支援」と「家族への支援」の両方が必須です。 その 前提 で、最終 報告書 をまとめていただくにあたって 本人への直接支援に関して、 以下の点をさらに掘り下げていただきたいと思っています。

a. 本人は 強度行動障害の状態にあったと 推測しますが、眠ってくれない、放尿する、放便する、裸になるなどの状態が継続すると、親子共倒れになります。 なかでも「眠ってくれない」 が続くと 深刻です。このような場合 一般的には、複数のスタッフが交代で支援できる施設入所利用 が選択される と考えます。ただし、 今回の ような困難ケースに対する支援実力があること と、 本人用の 物理的 環境と 個別プログラム を用意できること が 前提 になります 。また、私たちの経験では、 多くの場合 状態改善には数年 を要しています。
「 6. 今後の対応」にあるように 、 施設入所に成功しなかったわけ を 掘り下げ てほしい 。

b. 施設入所が本人に適さない場合には、 24 時間の訪問介護(家族との同居を前提としない)が選択肢になると考えますが、 その選択肢を検討 してほしい 。

c. 今回のような状態に対する支援 資源 が県内にあったのか 、 なかったのか を 検討 してほしい 。

d. 服薬に課題はなかったの か も 別途 検討 してほしい 。

今回のような悲惨な事件を二度と起こさないために、私たちは検証委員会の検討に強い 関心を持ち、参考にしていきたいと思っています。

以上

中間報告書
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/116023/chukan_houkokusho.pdf