就労について
(2003年03月25日に開催された参議院厚生労働委員会における発言と関連する事前のやりとりなど)

 2003年3月25日に参議院厚生労働委員会において浅尾慶一郎議員より自閉症に関して発言をしていただきました。
 この発言に先立ち、議員は協会の役員など関係者と若干の意見交換をしていただき、具体的な問題の認識を深めていただいておりますので、事前に行った意見交換を含めて、ご紹介いたします。

<目次>
 
一連の経過と概略  委員会前の懇談  厚生労働委員会におけるやりとりの要点  厚生労働委員会の議事録


一連の経過と概略

【浅尾慶一郎参議院議員が厚生労働委員会における発言を予定】
 浅尾慶一郎参議院議員(厚生労働委員会に所属しておられます)には高機能自閉症に関する取り組みについて、協会で開催した集会などにもお越しいただいており、その中で自閉症者の就労について課題があることをご理解いただいておりました。
 そのような経過から議員は3月20日に行われる厚生労働委員会の場で自閉症の就労について発言をしていただけることとなり、協会ホームページの掲示板でも傍聴したい方がおられればと考え案内をさせていただきました。

【委員会前の懇談】
 当日は、昼頃にご都合のつく方においでいただき、議員のご発言の前に具体的な状況をお伝えする場も設定をしておりました。  しかし、ご案内のようにイラク戦争が始まってしまい、同委員会の開催は延期されましたが、事前の懇談だけは行うことができました。
【委員会における発言】
 その後、同委員会は3月25日に実施され、浅尾議員は自閉症者の就労問題について厚生労働大臣を始めとした責任ある方の考えをただされ、状態が改善されるよう取り組むことを強く求めていただきました。

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委員会前の懇談

【懇談の概要】
 3月20日、参議院議員会館において志賀利一先生、辻井正次先生、山本常務理事、氏田理事、加えて、近隣支部の役員および会員が若干集まり懇談を行いました。  その中における意見交換の概要は次のようなものでした。

1.高機能自閉症の就労の難しさ
 高機能自閉症やアスペルガーの人は、知的発達障害という面では遅れがないため、障害者雇用としては認められず、就労を実現する上で厳しい状況となっている。(障害があり雇用する上では配慮が必要なことがあるが、企業は障害者を雇用したことにならない。)
 知的発達障害の有り無しに関わらず、自閉症を障害として認識した上で、就労の支援が必要である。
 (具体的な状況など、参加者から話がだされた)

2.高機能の人の就労の難しさを示す客観的なデータが必要
 制度的に支援されていないため就労が難しい。知的発達に障害のある方と、ない方で就労の状況に違いがあるかどうかについては、客観的なデータがないが、具体的な成果をあげていくためには、必要である。協会としても関係者に協力していただき、調査することが必要との考えがだされた。

3.具体的な就労支援の方法としては、ジョブコーチが有効である
 企業の中に自閉症に関する知識を持って指導できる方は通常はおられない。そのため、自閉症の人の就労を実現し、定着させるためには、自閉症のことを理解しているジョブコーチが必要である。  なお、ジョブコーチの制度ができたことは大きな期待ができるが、現状はスタートしたところであり、運用方法なども窮屈で、職場、仕事内容、余暇、保護者など家庭生活を含めた支援など、本人の環境の全体をとらえて、あるべき支援を行うというところまではいっておらず、自閉症の人の就労支援のためには、さらに改善が必要なこともある。

4.経済的自立に関する課題
 一般就労している自閉症の人は、多くが最低賃金レベルであり、それを下回る人も報告されている。年金を受けている人と受けていない人がいることや、短時間労働の人もいるため、一般就労でも経済的自立についての課題がみられる。
 また、福祉的就労では月数千円から1万円程度と自立には程遠い収入しかえられていないなど、幅広い視点で整理が必要との意見も出された。

5.それぞれに合わせた柔軟な対応の必要性
 現在の法律に自閉症の人を合わせることは難しいので、それぞれ多様な課題を抱えている自閉症の人に合わせた支援ができるようにしていくことが必要である。 (※自閉症といっても、一人一人に違いがあり、環境にも違いがあることから、保護者の意見についても幅がある。このため、幅広い会員の意見を集約し、また、他の障害者団体とも連携し、総合的な視点を持って問題提起ができるように協会として取り組んでいくことの必要性が、改めて感じられた。)

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厚生労働委員会におけるやりとりの要点
(どのようなことが話されたかわかるように、項目を中心に簡単にまとめたものです。具体的な内容については
厚生労働委員会の議事録をご覧ください)
1.坂口大臣は自閉症の雇用問題についてどのように認識されているか
<坂口大臣>  企業の経営者には障害雇用を積極的に考えてほしい。
 雇用が十分できていない企業の名前の公表を考えるところまできている。。

2.ハローワークでは自閉症の方に対してどのような対策を講じているか。これは知的障害として認定を受けた人と、そうでない人に分けて答えてほしい。
<森田政務官>
 ハローワークに、障害者の方の職業相談窓口を設置し、きめ細かな相談。。
 事業主の方に対して、障害者の方の就職後の職場定着指導も行っている。
 個々の状況に応じて、トライアル雇用や職場適応援助者を活用しながら自閉症や知的障害者の方々の就職の促進。
 <坂口大臣>
 ジョブコーチの重要性。
 自閉症の人の心の中をよく理解し、経営者に伝える。経営者の言っていることを自閉症の人に伝えることが大事。

3.自閉症という障害を持っている方で、知的障害として認定を受けている方は窓口で把握ができるが、そうでない場合にはハローワークではなかなか対応がとれていないのではないか。
<坂口大臣>
 ご指摘のとおり、その統計がとれていない。
 社会に適応していくためにどのような手の差し伸べ方があるのか、それはジョブコーチという範囲を少し超えて、ケアしていくことも加えたことが必要と思う。
 そのようなことができるよう、どう人を養成していくか、体制を作っていくか真剣に考えなければならない。

4.法定雇用率にカウントされていない方の雇用の難しさ。
  ハローワークの職員の研修の必要性。
<森田政務官>
 ハローワークの担当職員に対しては、ハンドブックの配布に加え、障害者雇用専門研修の実施、障害者の職業問題、雇用管理等について研修を行っている。
 より専門性の高い知識は、地域障害者職業センターと連携。
 すべてのハローワーク職員が受ける基本研修に障害者無目の職業紹介業務についてのメニューを盛り込んでいる。

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厚生労働委員会の議事録
 (56-参-厚生労働委員会-3号 2003年03月25日)

○委員長(金田勝年君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
 まず、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。
 社会保障及び労働問題等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、厚生労働省労働基準局長松崎朗君外九名の政府参考人の出席を求め、その説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(金田勝年君) 次に、社会保障及び労働問題等に関する調査を議題とし、厚生労働行政の基本施策に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
               (途 中 略)
               
○浅尾慶一郎君 本日は、実は自閉症協会の方も少し傍聴に来ていただいておりますので、残りの時間で厚生労働省として自閉症の方あるいは知的障害を持っておられる方に対する雇用対策について伺ってまいりたいと思います。
 まず、大臣は自閉症の方の雇用問題についてどのように認識をされておられますでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) 自閉症の皆さんあるいは知的障害者の皆さん方の雇用につきまして、現実問題といたしましては非常に心を痛めているわけでございます。自閉症の皆さん方はもうそれぞれ状態も違うわけでございますので一概になかなか言えないわけでございますが、自閉症のお子さんやそれから、お子さんといいますか、自閉症の方やそれから知的障害者の方をより積極的にやはり雇用しようという方も最近は出てきていただいておりますことを大変心強く思っております。
 そうした皆さん方は、やはり企業というのは、ただ単に物を生産するだけではなくて、社会的貢献というものがやはりプラスされた企業でなければならない。自閉症の皆さんやあるいは知的障害者の皆さん方、あるいはまた身体障害者の皆さんもそうでございますが、そうした方々の個々の能力をどう伸ばしていくかということが大変大事な時代に来ているということを言われている方がございまして、私は大変敬意を表しているわけでございますが、やはり企業経営の中にそうした思いで障害者の皆さん方を始めとする方々の雇用というものを積極的に考えていただく方が一人でも多く出てくることが大事だというふうに思います。
 厚生労働省といたしましても、そういう皆さん方が少しでもやりやすくしていくためにはどうしたらいいかといったようなことも実は考えております。幸いにいたしまして厚生省と労働省が合併したわけでございますから、今まで別々にやっておりましたことを一つにまとめて、そして皆さん方と雇用とをどのように連結をしていくかということに、今様々なことに取り組みつつあるところでございますが、決してまだ十分と言えるところまでは至っておりません。また、現在こういう経済状況でございますので、障害者の皆さん方の失業ということも一般の方々以上に大きな問題になってきていることも承知をいたしております。
 したがいまして、この雇用を、これはもう障害者全般についてでございますけれども、雇用を十分にしていただいていない企業というのがあるわけでございまして、そういったときにはその名前を公表するといったところまでやはり行わないといけないというので、その辺のところまで現在来ているところでございます。

○浅尾慶一郎君 具体的に伺ってまいりたいと思いますが、その前に、今おっしゃっていただいた中で、厚生行政としてやってこられた部分と労働行政としてやってこられた部分を一つにまとめるということは多分大きな要請があると思いますので、是非早急に進めていただければと思います。
 それからまた、雇用の進んでいない企業の名前の公表ということもおっしゃっていただきましたが、併せまして積極的に進めておられる企業を推奨するという観点から、そうした部分も公表していただければというふうに思います。
 そこで、具体的な質問をさせていただきたいと思いますが、ハローワークでは自閉症の方に対してどのような対策を講じていらっしゃいますでしょうか。これは知的障害として認定を受けた人と、そしてそうでない人と分けてお答えいただければと思います。

○大臣政務官(森田次夫君) ハローワークにおきましては、障害者の方の職業相談を専門に行う窓口を設置をいたしまして、知的障害者専門の職業相談を、相談員を置きまして、きめ細かな相談を行っておるところでございます。また、事業主の方に対しまして、障害者の方の就職後の職場定着指導も行っておると、こういう状況でございます。さらに、障害者の方の個々の状況に応じまして、トライアル雇用や職場適応援助者を活用しながら自閉症や知的障害者の方々の就職の促進を図っております。
 これらの施策を効果的に活用することによりまして、今後とも障害者の雇用促進を図ってまいりたいと、このように考えておるわけでございますが、あと、他の障害者も知的障害者と同じような形でいろいろと施策を行っておると、こういうことでございます。

○国務大臣(坂口力君) 今、森田政務官が述べたとおりでございますが、その中の一点を少し強調して言わせていただければ、ジョブコーチの話がございました。私は、自閉症等の場合には、やっぱりジョブコーチがしっかりとして、そして対応をしていくということがとりわけスタートのときには大事ではないかというふうに思います。
 ただ、その企業における経営者と、そしてそこに働く人たちとの間の仕事の割り振り、あるいはこうしてほしい、ああしてほしいというようなことだけではやっぱりうまく進みにくい。やはり、自閉症の皆さん方の心の中をやはりよく察して、そしてそのことが、仕事が円滑に進むようにどのようにしていったらいいかということの、少しその辺の、心の中を翻訳すると申しますか、心の中の状況を十分に経営者に伝える、また経営者の言っていることを十分にまた働く人たちに伝えるということが大変大事でありまして、その辺のところがやはりこれからの雇用にとりましては非常に重要になってくるというふうに私は感じております。

○浅尾慶一郎君 今、大臣御答弁いただきましたジョブコーチは是非推進していただきたいと思いますが、先ほどの質問でちょっと伺いたかったのは、それを推進するに当たっても、自閉症という症状を持っておられる方でも知的障害として認定を受けておられる方は窓口でそれは把握ができる。しかし、そうでない場合についてはハローワークではなかなか、具体的な対策として今のところ統計立ててはなかなか対策が取れていないというふうな認識を持っておりますが、その点について、現状はどうなっておるのか。あるいはそれを、先ほど厚生行政、労働行政一緒にするという観点からどのように変えていく可能性があるのか、その点について、ジョブコーチを進める上でもどういうふうに考えておられるか、御答弁いただければと思います。

○国務大臣(坂口力君) これは、御指摘いただきますように、なかなかそこの統計を取るところまで至っておりません。
 自閉症の皆さん方の中にも、一層この治療といいますか、治療というよりもケアと言った方がいいのかもしれませんし、やはりふだんから手を差し伸べる何らかの措置が必要な方もおみえでございますし、それからもうその必要性のない方もおみえだろうというふうに思います。また、知的障害というふうに認定されている人も中にはおみえだろうというふうに思いますが、決してそうではない方もおみえでございます。
 そうした皆さん方の場合に、初期の段階におきましては、もちろんお仕事をしていただくということも大事でございますが、あわせて、社会に適応していくためにどのような手の差し伸べ方があるのか。それは、ジョブコーチという範囲を少し超えて、治療と言うと少し言い過ぎになるかもしれませんが、もう少しケアをするというやはり立場も加えたことが必要になってくるのではないかというふうに思います。
 その辺のことがこれからスムーズにいけるようにするためには、そうした立場の人たちというものをどう養成をしていくかということも大事な問題になりますし、また全国のそうした皆さん方におこたえをしていくためにどういう体制を作り上げていくのかということも真剣に考えていかなければならないというふうに思います。

○浅尾慶一郎君 人に優しい雇用重視型社会を作っていくという観点から考えましても、今申し上げましたように、自閉症の方といっても様々な方がいられるわけで、そのうちの一部の方は知的障害ということで認定を受けておられまして、そういう方は障害者雇用率制度の下で、大臣が先ほど御答弁いただきました法定雇用率の中でカウントされると。しかし、そうでない方は当然その認定を受けていないから障害者ということではないんで法定雇用率にカウントされないということであります。どちらがどうかということはなかなか分かりづらいんでしょうけれども、今のような経済状況、雇用情勢を考えますと、自閉症を持っておられて、自閉症であって、そして障害者という認定をされていない方の雇用もなかなか難しいのかなと。
 ですから、そういう中でジョブコーチということは幅広く自閉症の方に役立つと思いますが、しかしそれに加えて先ほど申し上げましたような企業の啓蒙活動も是非進めていただければと、このように御要望させていただきたいと思います。
 時間の関係で恐らく最後の質問になろうかと思いますが、その中で、少なくともハローワークの職員においても、障害者に対してのきめ細かい対応ができるように、ハローワークの職員の研修ということもやっていくことが必要ではないかなと、こういうふうに思います。
 現状を伺いましたら、知的障害者相談窓口ハンドブック職員用というものが厚生労働省の、これは旧の労働省職業安定局が作られたものだと思いますが、こうしたものを渡しておられるということですが、ただ単にその窓口職員に渡すということではなくて、障害者といっても、大臣御存じのように、様々な、個々の方が持っておられる様々な態様があるわけですから、その窓口の方についても十分な理解が足りないと、せっかくの窓口であっても相談に来られた方に十分説明ができないというような事例も見られると思います。
 例えば、分かりやすく説明をしなければいけないときに分かりやすく説明し切れていないといったような事例も聞きますものですから、そうした観点から、まずは灯台の下から是非とも自閉症や知的障害者あるいは身体障害者の方との接し方について周知徹底をしていただきたいと思いますが、その点について御答弁をいただければと思います。

○大臣政務官(森田次夫君) 御指摘のとおりでございまして、障害者の職業紹介に当たりましては、障害種別、程度ごとにきめ細かい対応が必要であると、このように認識をいたしております。
 このため、ハローワークの担当職員に対しましては、障害者の職業紹介のための、ただいまお話ございましたハンドブックを配布するほか、毎年、厚生労働省の研修所におきまして障害者雇用専門研修を実施をいたし、それから障害者の職業問題、障害者の雇用管理等について研修を行っているところでございます。
 また、より専門性の高い知識につきましては、地域障害者職業センターと連携を図りながら習得を図る、このようにいたしておるわけでございます。
 さらには、ハローワークにおきましては、このため、すべてのハローワーク職員が受ける基本研修に障害者向けの職業紹介業務についてのメニューを盛り込んでいるところでございまして、これにより知的障害者の方に対する理解の徹底を図っているところでございますが、今後一層の徹底を図ってまいりたい、このように考えておるわけでございます。

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