「自閉症の方に関する弁護士あるある」全6回+完結編   第6回   辻川圭乃先生(弁護士)

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いとしご171号~179号で掲載したものをWEBで転載しています。

第6回  (最終回)親亡き後のために

 
①親亡き後のために何をすれば良いでしょう?

 いつか自閉症のある我が子を遺して逝く時が来ます。その時に備えて何ができるでしょう。お金をいっぱい遺す!確かに、お金はあるに越したことはありません。でも、いくらたくさん遺したところで、悪質商法にひっかかってしまったり、経済的虐待で搾取されてしまったら元も子もありません。兄弟姉妹がいるから大丈夫?もちろんいろいろと気にかけてくれるでしょう。でも、兄弟姉妹にもそれぞれの生活があり、人生があります。後々遺産を巡る紛争が起きないようにしておくことも必要です。 

 そのためには、自閉症のある子の周りに、信頼できる人と仕組みを遺すことが重要です。ただ、親亡き後のための特効薬のようなものがあるわけではありません。それぞれの仕組みには一長一短があります。また、いろいろな個別事情によっても違います。ですから、仕組みを知って、我が子の事情に合うものを組み合わせることで、後顧の憂いのない備えをすることができます。その手助けに弁護士が役に立つかもしれません。一度弁護士に気楽に相談してみてはいかがでしょう。

  

② 遺言、民事信託

 死後子どもたちが揉めないように、生前に、自分が亡くなったあと、誰にどの財産をどのくらい渡すかを決めておく方法として、遺言があります。遺言はいくらでも書き直すことができます。一番日付の新しいものが有効となります。遺言は自分ですべて作成する自筆証書遺言と公証人が作成する公正証書遺言があります。いずれも一長一短があります。また、自筆証書遺言の方法が今年若干変わりました。詳しくは弁護士にお尋ねください。


遺言は、自分が死亡した後のことしか決められませんので、生前に判断能力がなくなった場合には対応できません。また、遺言ではもらった遺産の使い道はもらった相続人の自由です。たとえば長男に多めに渡して、障害のある次男の面倒をみてやってほしいと遺言に書いたとしても、それには法的な効力はありません。しかし、信託を利用すれば、生前でもあらかじめ財産の管理を任せることができたり、自分の亡き後、遺された家族のために財産を自分の意思のとおりに使うことができます。受益者の設定の仕方でその次の世代にも財産を引き継ぐこともできます。財産の規模は問いません。

自閉スペクトラム症に理解のある弁護士
我が子の事情に合うものを組み合わせることで、後顧の憂いのない備えをすることができます。

③ ホームロイヤー、発達障害者地域生活安心サポーター

 障害のある子に財産をいくら遺しても、むしろたくさん遺せば遺すほど、いろいろなトラブルに巻き込まれないか心配の種はつきません。虐待、差別、犯罪被害、えん罪、犯罪加害、障害のある人の周りにはまだまだ危険がいっぱいです。これでは我が子を遺しておちおち死んでいられません。でもこればっかりはそういうわけにもいきません。

 発達障害者地域生活安心サポーターなど地域で発達障害のある人を守る仕組みが生まれつつありますが、まだまだ十分とはいえません。そんな心配のために、かかりつけ医のようにかかりつけの弁護士がいれば安心ですよね。月額5,000円くらいで顧問弁護士「ホームロイヤー」をつけることができます。

かかりつけ医のようにかかりつけの弁護士がいれば安心ですよね。月額5,000円くらいで顧問弁護士「ホームロイヤー」をつけることができます。

全6話内容構成

第1回  自閉症の方が弁護士に関わるのはどんなとき?
第2回 被害者になったとき
第3回 加害者になったとき
第4回 刑事事件について
第5回 障害年金、支給量、生活保護
第6回 親なき後のために
完結編