神田裕子著の『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(三笠書房)について

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2025年4月18日
一般社団法人 日本自閉症協会
会長 市川 宏伸

4月22日発売予定の新刊「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房)は障害に対する誤解を生み、差別や偏見、分断を助長するものと判断します。このような本を、90年を超える歴史がある三笠書房が発刊されることは誠に残念です。
現在、この本は表紙と帯、および目次をネット上で見ることができますが、それでも差別や偏見を助長すると判断する理由は以下の通りです。

  1. ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)の発達障害を一方的に「困った人」として扱っていることは誤解を生みます。
  2. 障害名を人のタイプに結び付けているために障害に対する誤解を生むとともに、表現されている特徴を有する人を障害者とする偏見をも生みます。
  3. ASDの特徴として「異臭を放ってもおかまいなし」やADHDを「同僚の手柄を平気で横取り」など特異な事例をことさら強調しているため偏見につながります。
  4. 結果としてASDやADHDの特性を有する人の尊厳を傷つけます。

大事なことは作者の差別意識の有無ではなく、本が当事者や職場、社会にどう影響するかです。
作者や出版社はそのことをよく考えていただきたい。
精神疾患などデリケートなテーマを扱う際に出版社は監修をいれたり、対象の人たちの受け止めを確かめるなど慎重な姿勢が求められます。
かかる書籍が、自閉スペクトラム症を含む障害のある人たちの人権を侵害するおそれがあることを懸念し、出版社が適切な対応をされることを期待します。
私たちは職場において、ASDやADHDの特性を有する人もそうではない人も分け隔てなく良好な関係ができるよう引き続き努力するものです。

以上