自閉スペクトラム症(ASD)について学ぶ
主に社会的なコミュニケーションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある等、多種多様な障害特性のみられる発達障害のひとつです。
この障害特性により、日常生活や社会生活において困難さを感じることがあります。
自閉スペクトラム症の歴史
1943 年にアメリカの児童精神科医のレオ・カナーが「早期乳幼児自閉症」と名付けた論文を発表して以降、「自閉症(Autism)」という言葉が世界中に認知されました。
また、1944年にはハンス・アスペルガーが「アスペルガー症候群(Asperger Syndrome)」についての最初の論文を発表し、徐々に知的障害が目立たない自閉症の存在が知られるようになりました。
2013年のアメリカ精神医学会(APA)の診断基準DSM-5の発表以降、自閉スペクトラム症としてまとめて表現することが多くなっています。
自閉スペクトラム症の原因
まだ、正確には解明されていません。けれども、遺伝をはじめ多くの要因が複雑に関与していると考えられており、親の育て方・虐待・愛情不足などが原因ではありません。
トラウマなどを背景に自分の殻に閉じこもってしまう、後天的な病気とも違います。
生まれつき、脳の中枢神経系という情報を整理するメカニズムに特性があるため、できることとできないことにばらつきがあり、日常生活でさまざまな困難が生まれてしまいます。
自閉スペクトラム症の割合
データにより異なりますが、人口に対するASDスペクトラム症の方は、おおよそ20人~40人に1人(2.5%~5%)は存在する可能性が指摘されています。
過去には、男女比はおおよそ4:1と男性に多くみられると言われていました。けれども、近年では、本人の困難が周囲からわかりづらいため見逃されてきた女性の自閉スペクトラム症が注目されています。
自閉スペクトラム症の特徴
自閉スペクトラム症の特徴は多種多様であり、一人ひとり異なります。
また、発達の段階に応じてもあらわれ方が異なります。
代表的なものとしては以下が挙げられます。
社会的な関係のもちづらさ
コミュニケーションの困難
特徴的な行動や動作
活動や興味の範囲が狭い
変化に対する不安や抵抗
社会的なイマジネーションの課題
感覚の過敏さと鈍さ
発達障害と知的障害
発達障害
日本では 2005 年に発達障害者支援法という法律が施行され、自閉スペクトラム症などの発達障害が支援の対象であることが明文化されました。
発達障害支援法では、発達障害を次のように定義しています。
「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」
しかし、「自閉スペクトラム症とADHD」「LDと自閉スペクトラム症」など、特性を重ねてもつ人も多く、それぞれの障害を明確に分けて診断することは大変むずかしいことが知られています。
また、年齢や環境により目立つ症状がちがうため、診断された時期により、診断名が変わることもあります
※イメージ図
知的障害
自閉スペクトラム症の方のうち、約半数は知的障害を伴っていると報告されています。
以前までは、知的障害を伴わない自閉スペクトラム症は、高機能自閉症、広汎性発達障害などと診断されていました。
また、アスペルガー症候群と呼ぶこともあります。
知的障害を伴う方、伴わない方それぞれで抱える困難さは異なりますが、いずれも共通する自閉スペクトラム症の特性をもっています。