第44回全国特別支援教育振興協議会「インクルーシブ教育システムの充実に向けて~ICT教育、交流及び共同学習」に参加して
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2022年12月2日に表記の会議が開催されました。
参加された東京都自閉症協会の学齢期部会で活動をされている吉田かおり様(お母さま)に内容をお聞きしました。
私(吉田)は、日ごろ主に学齢期の発達に困難を持つお子さんの保護者支援に携わっています。
参加した動機は、文部科学省の官僚や大学の先生方の考えと、保護者支援の現場で聞く実情の間にどのくらいの乖離があるのか興味があったためです。
内容は多岐にわたりますので、特に印象に残ったポイントに絞りご紹介をさせていただきます。
□第1部 「ICT教育の充実に向けて」
この講演では、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課の課題分析が非常に的確で素晴らしかったことに驚きました。
特に驚いた点が以下の2点です。教員の専門性や管理職の障害理解の課題が数字として現れていました。
- 小学校等の特別支援学級の”臨時的任用教員”の割合が、学級担任全体における割合の倍以上であること
- 小学校で70.6%、中学校で75.4%の校長が特別支援教育に携わった経験がないこと
※臨時的任用教員・・・近年は正規教員が不足することがあり,その調整もあり任用される教員。
「採用後10年以内に特別支援教育を複数年経験させること」、「管理職の任用に当たり特別支援教育の経験を考慮する」等、教員の専門性向上のための方策も素晴らしい内容でした。
ただ、強制力を伴わないことで、どこまで市区町村の現場で実施されるか懸念があります。
また、国連の勧告と特別支援教育を受ける児童生徒数の激増(H23年度からR3年度で2.0倍)を受け、できるだけ通常級で、との方向性も明確でした。しかし、教員不足の深刻化と業務量の多さに学級担任の先生方は疲弊しているのは、保護者の方々からもしばしば耳にするところです。
発達障害に対する認知が進み、保護者のニーズも以前の「できる限り通常級で」から「安心できる環境で自己肯定感を」という方向に変わってきています。インクルーシブ教育の実現には、教員の専門性向上と並行して、学級担任の負担軽減等により通常級がすべての児童生徒にとってより学びやすい場所になることが望まれます。
□第2部 「交流及び共同学習の充実に向けて」
「地域で共に生きる仲間としての意識を高める」と題した関西学院大学の丹羽登先生の講演の中で、地域の公立校と特別支援学校の「居住地交流」についてのお話が印象的でした。
大規模災害時、避難所で不適応を起こしたお子さんに対して、交流で顔見知りになった生徒の特性理解が適切なサポートにつながったとのこと。まさに地域に生きる仲間同士としての交流の本当の意義を感じます。
しかし実際には市区町村や学校、保護者の理解が得られないことや、付き添いの教員の確保の困難など課題が多く、直接交流を実施している特別支援学校は小学校で53.0%、中学校では37.9%に止まります。
また、通常市区町村が学齢期の子供の学齢簿を管理しその後の就学先や変更先を把握している中、特別支援学校に就学した子供についてはその後の状態が把握できていないとのことでした。
真のインクルーシブ実現のために、学校だけではなく社会全体の意識の変化が必要であることを強く認識しました。